はじめに組織のパフォーマンス向上のため、メンバーのモチベーションを高めたいと考えているマネージャーも多いのではないでしょうか。しかし、モチベーション管理は難易度が高いため、日頃から頭を抱えている方も多いと思います。そんな難易度が高いモチベーション管理ですが、そもそもモチベーションとはどのようなものでしょうか。今回の記事では、モチベーション管理を行う上で大切なモチベーションの基本的な項目について触れていきます。具体的には、前半でモチベーションの構成要素を説明した後に、モチベーションに影響する要因について触れていきます。記事の後半では、実際の現場で役立つ職務特性モデルという内発的動機付けを高める職務の特性に着目した理論についてご紹介します。モチベーションの3つ構成要素モチベーションとは、目標を達成するために努力する心理的なエネルギーです。モチベーションは以下の3つの構成要素からなります。方向性方向性とは、なぜその目標、課題を達成するのかという理由を指します。強度目標を達成するための、意識の高さや努力の量を指します。持続性目標を達成するための努力が費やされる時間の長さを指します。モチベーションを考える際には、これら「方向性」「強度」「持続性」の3つの要素を考える必要があります。例えば、あるメンバーがなぜその目標を達成すべきなのかという理由を把握していても、その目標達成に向けて努力をしていなければモチベーションが高いとは言えません。また、稼働時間の長さのような形で持続性が長い状態であっても、目的達成に意識が向いていなければ、とりあえず働いている状態になってしまっています。このような場合も、モチベーションが高いとは言えないでしょう。モチベーションが高い状態とは、この3つのバランスが取れている状態を指します。このようなモチベーションんお高低を把握するための方法として、メンバーの行動を観察したり、またはアンケートを集計し、その集計結果からメンバーのモチベーションの高低を判断することが一般的です。このようなモチベーションの把握を行うツールが、モチベーション管理ツールになります。モチベーションに影響する要因「やる気を出そう!」「モチベーションをあげよう!」と鼓舞しても、上述したようなモチベーションに影響は与えることは困難です。それでは、モチベーションへ影響を与える要因はどのようなものでしょうか。ここではモチベーションに影響を与える要因として、外発的動機付けと内発的動機付けをご紹介します。外発的動機付け外発的動機付けとは、組織が報酬を与えることで、モチベーションに影響を与えるものです。例として、インセンティブや業績に連動した賞与などがあげられます。内発的動機付け内発的動機付けは、本人がその課題や業務に取り組むこと自体に楽しさや意義を感じることです。例としては、趣味や遊びに夢中になる感覚があげられます。以上のような外発的動機付けと内発的動機付けが、モチベーションに間接的に影響を与えることができます。そのため、モチベーション管理を行う際にはこれらの動機付けを考慮しながら具体的な施策を考えることが必要です。また、外発的動機付けと内発的動機付け、どちらが優れているというものはありませんが、それぞれ注意する点があります。外発的動機付けの弊害の例としては、報酬がないと業務を実行しなくなる可能性があります。例えば、営業部でインセンティブを付与してあるサービスの獲得増加を行った結果、インセティブ対象のサービスの販売は積極的に行うが、反対にインセンティブがつかないその他のサービスに関しては販売が疎かになってしまった、などです。また、内発的動機付けの注意点としては、業務内容に楽しさを感じてモチベーションが高まっている状態のため、配置転換などで担当する業務内容自体が変更されると一気にモチベーションが下がってしまう、などが考えられます。内発的動機付けを高める職務特性に着目した職務特性モデル外発的動機付けの例としてインセンティブなどがあげられます。外発的動機付けに関してはイメージがしやすいと思いますので、ここでは、もう一方の内発的動機付け向上を考える上で役に立つ、職務特性モデルを紹介します。職務特性モデルは、J・リチャード・ハックマンとグレッグ・R・オルダムによって提唱されました。職務特性モデルでは、内発的動機付けを高める業務には、以下の5つの特徴が共通していると述べられています。技能の多様性その業務を遂行するにあたり、どれだけ多くのスキルが必要か職務の完結性その業務全体の始まりから終わりまで、自分がどの程度関われているか職務の重要性その業務が他者に与える影響の度合い自律性許容されている業務の自由や裁量の程度フィードバック業務の進捗や、成果の良し悪しが評価し伝えられる程度以上のような5つの特性が業務に含まれていると、その業務は内発的動機付けを高める効果が期待できる業務になります。一方で、5つの特性のうち一つでも0に近い特性があると、その業務は内発的動機付けがされなくなってしまいます。そのため、内発的動機付けを考慮する際は、この5つの特性が業務に含まれているか、含まれていない場合は特性を含むことができるように業務を設計することが重要になります。また、この職務特性モデルの注意点として、内発的動機付けに影響を与えるかどうかは個人の成長欲求に大きく依存する点です。つまり、成長欲求がない個人に対して、5つの特性を持つ業務を与えても内発的動機付けを高めていくことは難しいということになります。成長欲求がない個人に対して全く効果が期待できないと言う訳でありませんが、そのようなメンバーの場合は別のアプローチも組み合わせることがおすすめです。職務特性モデルを利用した内発的動機付けの例さいごに職務設計モデルの特性にテコ入れを行い、内発的動機付けを高めていくためにはそれぞれどのような施策が考えられるか、その特性ごとに例をあげていきます。技能の多様性の例技能の多様性に関しては、業務の範囲を拡大することがあげられます。例えば、営業であれば、自身の営業のみ行っていたメンバーに対し、新メンバーが入社した際の新人研修の一コマを任せてみる、などです。職務の完結性の例職務の完結性は、その業務の上流や下流にも範囲を広げることが考えられます。例えば、戦略の方向性を決める会議に参加してもらう、顧客にサービス提供を行う部分まで担当してもらうなどです。職務の重要性の例職務の重要性に関して、会社としてメンバーが現状行っている業務をどのように考えているかを伝えることが考えられます。例えば、メンバーが普段何気なく行っている業務でも、会社としては非常に重要であり、その重要なポジションだからこそ該当メンバーに任せていることを伝える、などです。自律性の例自律性に関しては、権限移譲が考えられます。今まで上司に確認してから実行していたものを、メンバーの裁量で決めることができるように権限を一部移譲するなどです。フィードバックの例フィードバックの例としては、週に一回業務のフィードバックを上司から行う、または顧客の声をメンバーに届くようにする仕組みを作る、などが考えられます。さいごにモチベーション管理は人の心に関わる部分のため、直接影響を及ぼし期待通りにコントロールすることはできません。しかし、メンバーと対話を行い、それぞれが何に動機付けをされるかを理解し、間接的にモチベーションを上げる工夫を行うことは可能です。