昨今の新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言の発令等により、多くの企業がテレワーク導入の検討に追われており、今後もこの動きは続くと見られています。一方で、2020年2月の時点から一足早くテレワーク稼働を試験導入した企業や、近年の「働き方改革」の文脈でテレワーク稼働を導入していた一部の企業では、在宅勤務体制において共通して起きやすい「問題点」が明らかになってきています。そのうちの一つが「コミュニケーションの減少」です。同僚や上司との些細な雑談の機会が無くなったことで、業務上の疑問解消やノウハウ伝達の場が失われてしまうことが危惧されています。同じオフィスで稼働していればその場の口頭のやり取りだけで瞬間的に解決できるような問題でも、テレワーク環境下では「わざわざメールで聞くほどでもない」、「電話しづらい」等の理由で放置されてしまったり、対応が遅れてしまうといったことが頻繁に起こり得るのです。そして、こうした問題への対策の一つとして再び注目を浴びているのが「社内FAQ」です。本記事では、テレワーク環境下における新たな「社内FAQ」の有効性や運用方法、作成のポイントやコツを解説致します。社内FAQによる4つの効果01. テレワークでも滞りなく業務を進められる社内FAQの導入によって得られる効果はさまざまありますが、一つには業務効率を落とすこと無くテレワーク環境に移行できることがあげられるでしょう。テレワーク環境以前には想定していなかったような事態に直面しても、対応策を人に聞いたり、ネットで調べたりする前に社内FAQを参照することでスムーズに解決できる可能性が高まります。02. 無駄なコミュニケーションコストが削減される社内FAQの設置は、質問する側だけ無く、質問される側により多くの恩恵をもたらします。部下を持つ上司や他部署からの質問を受け持つ担当者などは、よくある質問に何度も同じ回答していることに多大な時間を割いてしまっています。このような無駄なコミュニケーションコストを削減し、その分だけより重要なコミュニケーションの時間や本来の業務に集中する時間を増やすことができるでしょう。03. スタッフの心理的な悩みが解消される上司の人柄にもよりますが、部下にとって分からないことを上司に質問することは多少の心理的ストレスを与えます。もし、それが基本的なことであったり、以前にも説明されているようなことであったら尚更、質問すること自体に心理的な抵抗を感じることでしょう。結果的に分からないままにしてしまいより大きな問題に発展させてしまったり、などということもありえます。社内FAQの設置は、こうした無意味な衝突や心理的な不安を生まずに問題解決の手段を示すことができるのです。04. 対応手法や知識が標準化される社内FAQのメリットとして、問題解決の手法や知識を一種のマニュアルとして機能させることで、属人的なノウハウを標準化することができるという点があげられます。ベテラン社員等が経験によって会得している様々なケースの問題とその対応策をFAQという形式で明文化することで、簡易的なナレッジマネジメントとしての役割を果たします。また、知識が標準化されるということは、特定の人に依存しなくても問題解決を図ることできるようになるという意味でもあります。特定の社員に偏っていた業務を平準化することで、誰かに頼り切りになるのでなくそれぞれがカバーしあいながら仕事をすることができるようになるはずです。社内FAQの導入・運用に必要な6つの条件01.テレワーク環境でアクセスできること社内FAQ構築のために必要なシステムの条件としては、まずは当然ながらテレワーク環境下でアクセスできることが挙げられます。テレワーク環境下でアクセスできる、とはすなわち社員の自宅からアクセスできることであり、また自宅に持ち帰ったノートPCやモバイル、または社員自身が保有するPCからアクセスできることを意味します。したがって、VPN環境を構築するか、セキュリティの信頼できるクラウドツールを用意する必要があります。02.作成や更新が簡単にできること社内FAQシステムを選ぶ際に、FAQの作成が容易であることを上位の条件に置くべきでしょう。なぜなら社内FAQがうまくいかないケースとしてよく見られるのが「更新されない」という問題があるためです。導入した時点では関心の高さから多くのコンテンツを作ることができたとしても、時間が経つにつれ当然ながらコンテンツは陳腐化していきます。そのときにコンテンツ更新の手間が最小限でなければ、更新されないまま放置されてしまう可能性が高いのです。したがって、FAQコンテンツの作成が簡単にできること、例えばHTMLの編集が必要ないことや、既存のマニュアル(PDFやword、PowerPoint等)をそのまま流用できること、などが望ましいといえます。03.検索がしやすいことFAQが陳腐化する別の要因として「検索してもすぐに見つからない。だから使わない」という問題があります。すぐに見つけられなければ、「直接聞いたほうが早い」という判断になり、社内FAQ導入の当初の意味を失ってしまいます。ですので、社内FAQには検索のしやすさ・目的のコンテンツの見つかりやすさ、という条件が求められます。具体的には、全文検索やタグ付けの機能、絞り込み検索の機能等が備わっているか、またよく利用されるコンテンツの上位表示や逆に利用されないコンテンツの検出機能など、コンテンツが増えたときに埋もれてしまわないためのUIや機能が備わっているかが重要となります。04.誰でも簡単に使いこなせるUIUXであること同様に、誰でも使いこなせるようなシンプルで分かりやすいUI/UXであることが求められます。社内FAQを見て、一見して「わかりづらい、探すのが面倒くさい」という印象を抱かれれば、やはり「直接聞く」または「諦める」という選択肢を選ぶ可能性が高まり、FAQ設置の目的を満たせていません。05.アクセス状況を可視化できること作成したFAQコンテンツのアクセス状況が確認できると、利用者がどんなことに疑問を持ち、何を解決しようとしているのかが把握できるので、今後拡充すべきコンテンツが見えてきます。また、利用者の行動を可視化・追跡することは、FAQ内のコンテンツで十分に問題解決できているのかといった、効果の測定をする上でも役立ちます。06.通知されることFAQシステムの条件として望ましいものの一つに「通知機能」があります。特に新しくコンテンツが追加されたり、更新されたりした際に対象者に更新することができることがベストです。コンテンツを更新しても、それを知ってもらわなければ意味がないのです。