はじめに営業のノウハウ共有を行いたいがなかなかうまくいかないというお悩みをお持ちの組織も多いのではないでしょうか。今回の記事では、営業ノウハウ共有のメリットと基本ステップをお話しし、その後に共有するノウハウの優先順位を判断するマトリクスと、営業ノウハウ共有が失敗する4つの理由とその対策について触れていきます。営業ノウハウ共有のメリット営業ノウハウを共有することにより、大きく分けて以下の3つのメリットを享受することができます。メリット①:社員の能力向上メリット②:業務効率化、工数・コスト削減メリット③:互いに共有し、成長し合う文化の醸成社員の頭の中に埋もれていたノウハウを共有し、有効活用できるようになると、一人一人が参考にできるノウハウの量が増加し、個人の成長を促します。また、既に答えの定まっている情報は1ヵ所で集中して管理されるために業務の効率化、工数削減へとつながります。こうした共有の習慣が定着することで、互いに支え合い、成長していく企業風土の醸成が実現されることでしょう。以上のような理由から営業ノウハウの共有は重要になります。では次に営業ノウハウ共有の基本的なステップをみていきましょう。営業ノウハウ共有の基本ステップ営業ノウハウの共有には、以下の図のような基本的なステップがあります。まず最初に個人が保有するノウハウをメンバーに共有します。その共有されたノウハウを蓄積し、蓄積したノウハウを扱えるようメンバーに落とし込む必要があります。このような3つのステップの中で、今回は”共有”のステップに特化して、営業のノウハウ共有が失敗する4つの理由とその対策をお話ししていきます。※蓄積と活用に関しては、また別の記事でお話しできればと思います。共有するノウハウの優先順位を判断するマトリクス営業ノウハウを共有する際のポイントとして、共有する営業ノウハウを絞ることが大切です。闇雲に全ての営業ノウハウを共有しようとしても大きな効果を得ることができないため、共有した時に一番インパクトが大きそうな営業ノウハウを選択する必要があります。その選択を行う選択軸の例としてのマトリクスを紹介します。図のマトリクスは、横軸に「体系化」を取っています。右にいくと営業ノウハウが体系化済みであり、左にいくと営業ノウハウの体系化が済んでいない、ということを表しています。また、縦軸には「再現性」をとり、上にいくと営業の再現性が高いノウハウを、下にいくと再現性が低いノウハウを表します。マトリクスの右上は再現性が高く、体系化が済んでいるノウハウです。例として、営業マニュアルなどが挙げられます。営業のノウハウ共有化を考える時には、このマトリクスの左上の黄色の領域を中心に考えます。つまり、再現性が高く、体系化がまだ済んでいないポイントです。これらの領域の営業ノウハウを整理して共有することが、最もインパクトが大きい営業ノウハウ共有になります。反対にインパクトが小さい領域は、左下の領域です。左下の再現性が低い部分に関しては、営業ノウハウの抽出自体が難しいため、着手することを避けるべき領域です。営業ノウハウの共有を考える際には、図のようなマトリクスを作成してどの部分のノウハウを共有していくかを絞ることが大切になります。共有が失敗する4つの理由とその対策それではここから、営業ノウハウの共有が失敗する4つの理由とその対策を順にみていきます。失敗する理由①:企業の文化や雰囲気に課題がある、または適していないナレッジを共有する上で重要になってくるものの一つに企業風土があります。例えば、全社的にメリットがあるはずのノウハウでも、社内の雰囲気からなかなか共有できないといったことは多々あります。また逆に、成果主義の企業では情報を出し惜しみしてしまうことがあります。失敗例・「自分のノウハウなんて共有してもしょうがない、、、」と遠慮してしまう・競争が激しく肝心な情報を出し惜しみする対策対策としては、ノウハウを出した人を表彰するインセンティブ制度を設計する。メンバーから営業ノウハウを出して欲しい人にリクエストできる営業ノウハウリクエスト制度などを設計するなどが挙げられます。失敗する理由②:営業ノウハウを共有するための制度が整っていない営業ノウハウ共有を成功させるためには、制度設計が重要です。なぜ営業ノウハウを共有するのか、従業員がの目的やビジョンを理解していることが重要になってきます。また、スタートしてすぐの段階で活発に共有されるようになるのは難しいかもしれません。そのため、営業ノウハウの共有を促す立場の部署や担当者を立てたほうがうまくいくでしょう。担当者は経営陣と連携し、全社的な取り組みであることを周知徹底しましょう。失敗例・営業ノウハウを共有する動機付けがされていない・営業ノウハウ共有を主導する担当者がはっきりしていない・経営手動ではなく、人事や一部の部署任せになってしまっている対策経営層に協力してもらい、最初のキックオフの時にメンバーに経営層から取り組みの目的を説明してもらう。突然始めるのではなく、なぜ行うのかを事前にメンバーに周知するなど。周知する場合はメールでの通達ではなく、きちんとミーティング形式で周知する方が望ましい。失敗する理由③:システムのUIUXに問題があるシステムのUIやUXが悪く、メンバーが営業ノウハウを共有するのに手間を感じてしまうと営業ノウハウ共有は定着しません。失敗例・システムの共有手順が直感的ではなく、難しいと感じる・システムの共有手順を覚えるのに時間がかかる・共有のための工数が多く、途中でやめてしまう対策システムの使い方を動画にして、共有する。システムの使い方説明会を何度か開催し、できるようにサポートしていく。システム自体を使い易いシステムに入れ替えてしまうなどが挙げられます。失敗する理由④:その他の落とし穴先に述べた3つの理由意外に、営業ノウハウ共有がうまくいかない失敗例を記載します。失敗例・優秀な人ほど忙しく共有する暇がない・暗黙知を言語化して、形式知にする作業ができない・日常業務に謀殺されて共有する余裕がない対策新人メンバーが、優秀なメンバーのノウハウを共有化する作業を行うなどが挙げられます。さいごに営業ノウハウ共有化に関して課題を感じている組織も多いですが、実行できれば組織営業力を大きくあげることが可能になります。ぜひ、営業ノウハウが共有される組織作りを行っていただければと思います。