ナレッジマネジメントの3つのステップ前回の「全4回 ナレッジマネジメントとは?Part1-テレワーク時代に効果を発揮するナレッジ共有と管理の仕組み」という記事で、ナレッジマネジメントが求められる背景、目的や効果、具体的なステップなどについて説明しました。そこでも説明した通り、ナレッジマネジメントのステップは、「共有」→「蓄積」→「活用」の3段階で展開していく必要があります。例えば、営業現場で競合情報に関する有用な情報が朝礼で共有されたとしても、その情報が蓄積されなければその場にいたメンバーの記憶にしか残らず、後に入社してくる人や他支店の人がその情報を活用することはできません。また、仮にその情報が社内データベース上に蓄積されていたとしても、意図がきちんと伝わらなかったり、あるいはそもそもそのナレッジが存在することに気づかれなければ、ナレッジが有効活用されることはありません。今回の記事では、3つのステップの中の「共有」に焦点を当てて、いざ社内でナレッジを共有しようとしたときに、なかなか共有されず失敗してしまう原因とその対策をまとめました。 「Step1.ナレッジの共有」がされない失敗理由ナレッジの共有がされない理由として、組織体制自体に起因する「ルールや文化の問題」と使用しているナレッジマネジメントツールに起因する「ツールの問題」があります。それぞれ、具体的にどのような失敗理由があるのか見ていきましょう。ルールや文化の問題1. ナレッジを共有する目的・動機付けがされていないなぜナレッジを共有すべきなのか、というナレッジマネジメントの目的やビジョンを従業員にしっかり伝えないないまま、理解に欠けた状態で進めてしまうと、なかなかナレッジが共有されないという事態になりがちです。これはナレッジマネジメントに限りませんが、新しいツールを入れたり、新しい制度を設計したりするときにはその目的や意図が伝わらないままに走ると、従業員はついてきません。2. ナレッジマネジメントを主導する担当者が曖昧ナレッジ共有の担当者を決めずに漠然と「今日からみんなでナレッジをシェアしていこう」と、始めてしまうとなかなかシェアされません。特にはじめのうちは、どのようにしてナレッジをシェアすれば良いのか、どんな内容がいいのか、などの試行錯誤を繰り返す必要があります。ですので、立ち上げの時点で主導する担当者をしっかりと決定し、社内プロジェクトとして推進した方が上手くいくでしょう。3. 経営主導でなく、一部の部署やメンバーに任せきり「とりあえず現場でやっといて」というように、一部の部署やメンバーに任せっきりになってしまうと、会社として重要事項として取り組んでいくということが伝わらず、なかなか浸透しないということがあります。会社として、重要プロジェクトとして、取り組んでいくんだということを、担当者だけでなく、各従業員に伝えましょう。4. 「どうぜ皆知ってるだろうから…」と遠慮し、共有しにくい雰囲気「このナレッジは誰かの役に立つかも。共有したほうが良いかな?」と思っても「でもみんな知ってて当たり前のことかも」と躊躇してしまうこともよくあります。自発的に情報発信できるかどうかは、会社やチームの雰囲気によって左右されます。このナレッジマネジメントというプロジェクトにおいては、シェアする際に「この内容が人の役に立つかどうか?」ということは一切気にする必要が無いということを、担当者は徹底して説く必要があります。プロジェクトの初期ではシェアという行為事態を称賛していくことが重要です。 5. 競争が激しく肝心な情報を出し惜しみする例えば、営業などの成果主義のチームでは情報を出し惜しみしてしまうことがあります。そのような雰囲気のメンバーは、自分にとって肝心な情報は隠し、当たり障りのない情報だけを共有するようになります。6. 業務が忙しく共有する余裕が無い業務量が多く常に忙しい組織では、直接的に業務に含まれているわけではないナレッジのシェアを後回しにしてしまうことがよくあります。対策としては、週に1回は定期的にナレッジシェアの時間を作る、などのルールを決めてしまうのが良いでしょう。また、個人レベルでは業務が忙しい人ほどナレッジを蓄積していることがあります。例えば、そうした人から口頭でナレッジを共有してもらい、他のメンバーが議事録化してシェアしていくなどの工夫をするとよいでしょう。ナレッジマネジメントツールの問題7. ツールの共有手順が直感的ではなく、難しい。ナレッジマネジメントツールのUIUXがあまり良くないと、シェアする作業に手間がかかり、段々と共有されなくなってしまうことが多いようです。ツールを選ぶ際には、シェアする側にとって直感的に操作でき、なるべく一瞬でシェアできるような簡単のものを選ぶと良いでしょう。8. ツールの使い方を覚えるのに時間がかかる。そもそもツールの使い方を覚えるのに手間がかかると、その時点でシェアすることを断念してしまうケースも多々あります。重要なことはナレッジがシェア、蓄積され、活用されることですので、ストレスなく使い方が覚えられるツールを選定しましょう。その他の問題9. 暗黙知を言語化して、形式知にする作業が難しい長年の経験によって体得したナレッジは、本人ですらはっきりと体系立てて理解していることは少なく、言語化して他人に共有できる形式にすることは困難な作業を伴います。状況は限定されますが、解決策として一連の作業の様子を動画でまるまる撮影し、動画データをそのままシェアするという方法もあります。